■4次元正多胞体による空間充填と元素定理(その7)

 (その5)において,正α胞体に正β胞体が含まれる場合,両者の包含関係は頂点数の整除性によって決定されるとしたのは私の早とちりであった.たとえば,正12面体(頂点数20)の中に立方体(頂点数8)を内接させることはできるが,20は8で割り切れない.そこで,対角線の長さを求めてみることにした.

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【1】正n+1胞体

 n次元正単体の頂点の座標を

  (1,0,・・・,0)

  (0,1,・・・,0)

  ・・・・・・・・・・・

  (0,0,・・・,1)

としよう.これらの頂点間距離は√2である.頂点数はn+1個あり,各頂点からはn本の稜がでて,すべての頂点を結ぶと単体ができあがる.

 これらの座標が与えられたとき,残りの1点の座標は

  (x,x,・・・,x)

とすることができる.他の頂点との距離は√2であるから,

  (x−1)^2+(n−1)x^2=2

すなわち,

  nx^2−2x−1=0

を満たさなければならないことより,

  x={1−√(1+n)}/n

が得られる.

 n+1個の頂点:

  V1(1,0,・・・,0)

  V2(0,1,・・・,0)

  ・・・・・・・・・・・

  Vn(0,0,・・・,1)

  Vn+1(x,x,・・・,x)

の中心座標(体心)は

  ((x+1)/(n+1),・・・,(x+1)/(n+1))

である.

  x−(x+1)/(n+1)=−1/√(1+n)

より,外接球の半径は(n/(1+n))^1/2

 対角線の長さと本数は

  L1=√2,N1=n

  V=n+1,K=(1+1/n)

  K=1/r^2

  SS=K・V/2×ΣNjLj^2

を計算すると

  SS=(n+1)^2=V^2

 外接級の半径を√nとすると

  L1=√2(n+1),N1=n

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【2】正2n胞体

 (±1,±1,±1,±1,・・・)を頂点とする1辺の長さ2,外接球の半径√nの正2n胞体を考える.頂点数は2^n個あり,各頂点からはn本の稜がでる.

  L1=2,N1=n

  L2=2√2,N2=n(n−1)/2

  L3=2√3,N3=n(n−1)(n−2)/6

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  Ln=2√n,Nn=1

  V=2^n,K=1/n

  SS=(2^n)^2=V^2

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【3】正2^n胞体

  (±1,0,・・・,0)

  (0,±1,・・・,0)

  ・・・・・・・・・・・・

  (0,0,・・・,±1)

を頂点とする1辺の長さ√2,外接球の半径1の正2^n胞体を考える.頂点数は2n個あり,各頂点からは2(n−1)本の稜がでる.

  L1=√2,N1=2(n−1)

  L2=2,N2=1

  V=2n,K=1

  SS=(2n)^2=V^2

 外接級の半径を√nとすると

  L1=√2n,N1=2(n−1)

  L2=2√n,N2=1

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【4】証明

 外接級の半径を√nとした場合,正2n胞体の対角線の長さは√4kで与えられる(k=1〜n).正2^n胞体の対角線の長さがこのいずれかに等しくなるのは2n=4kのとき,すなわち,偶数次元のときである.

 一方,正n+1胞体の対角線の長さが正2n胞体の対角線のいずれかに等しくなるのは2(n+1)=4kのとき,すなわち,奇数次元のときである.

 故に,正2n胞体は万有多胞体ではなく,万有多胞体は存在しない.これもほぼone sentence proofといってよいであろう.

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