■平面代数曲線とライスの公式(その2)

【1】平面代数曲線

 一直線上にない3点を通る2次曲線,4点を通る3次曲線はただひとつ存在しますが,それは座標軸の方向が定まっている場合:

  y=ax^2+bx+c,y=ax^3+bx^2+cx+d

のようにy=f(x)の場合であって,一般には,平面上の任意の位置にある5点が唯一の円錐曲線を決定します.ニュートンは「プリンキピア」のなかで5点を通る円錐曲線の作図法などを案出しながら壮大な天体力学を展開しています.

 n次平面代数曲線の方程式f(x,y)=0は,(n+1)(n+2)/2個の係数をもっていますが,fに定数を掛けても曲線は変わりませんから,n次曲線はn(n+3)/2個のパラメータに依っていることになります.そこで,平面内に与えられたn(n+3)/2個の点(xi,yi)を通るという条件によって曲線を決定するという問題が自然に提起されます.ニュートンはこうした研究を応用して,2次曲線上の5点,3次曲線上の7点が与えられた場合にこれを作図する方法を見いだしたのです.

 まとめると,2個の点を通る直線はひとつ,5個の点を通る2次曲線はひとつ,9個の点を通る3次曲線はひとつ,14個の点を通る4次曲線はひとつ,・・・,(n+2,n)−1=(n+1)(n+2)/2−1=n(n+3)/2個の点を通るn次曲線はひとつあります.

===================================

【2】代数曲面

 4次曲線(項数15)とか5次(項数21)以上の高次曲線も考えることができるが,1900年当時まで,5次曲線までと3次曲面までのトポロジカルな分類は既に知られていたようである.

 2次曲面f(x,y,z)=0は楕円面,一葉双曲面,二葉双曲面,楕円放物面,双曲放物面のどれかに分類される.

 1849年,ケーリーは滑らかな3次曲面はすべてある一定数の直線を含むこと,サーモンはその数は27であることを証明した.すなわち,3次曲面f(x,y,z)=0には無数に多くの直線がのっているか(その場合には線織面と呼ばれる),そうでなければ,高々27本の直線しか含まないことが証明されている(サーモン,1884年).

 1次曲面(平面)は∞^2個,2次曲面は∞^1個の直線を含み,一般の3次曲面では(少なくとも1本の直線を含むが)その数は高々有限個(27本)である.それに対して,一般のn次曲面(n>3)は直線を全然含んでいないというわけである.

 シュレーフリは3次曲面上の27本の直線の組に従って,滑らかな実3次曲面を5組に分類した.この5組にはそれぞれ27,15,7,3,3本の実直線,そして3直線を含む実平面が45,15,5,7,13入っている.

 アルキメデスの墓石に円柱・円錐・球,ガウスの墓石に正17角形が彫られた如く,ケーリーとサーモンの墓石には27本の直線を彫るべきだとシルベスターがいったことは19世紀にこれらの3次曲面がいかに重要視されたかを物語るものだろう.

==================================

【3】補間問題

 ある次数をもつ代数曲線が,平面においていくつの与えられた点を通るかどうかが補間問題である.ただしそれらの点において曲線の挙動(方向など)が指示されている.ここでは,ラグランジュ補間(n個の標本点において与えられた値をとるn−1次の多項式)・エルミート補間(標本点における微分係数まで一致する2n−1次の多項式)に加え,スプライン補間を考察する.

[1]スプライン関数は,多項式を連続条件を満たすように接続した区

分多項式であり,3次スプライン関数はその多項式に2次導関数まで連続となるような3次式を用いたものです.区間ごとにつぎの係数を算定し,有限区間を補間します.

  スプライン曲線     :y=ax^3+bx^2+cx+d

  1次導関数(曲線の傾き):y’=3ax)2+2bx+c

  2次導関数(曲率)   :y”=6ax+2b

 3次スプライン補間では2次導関数は折れ線(1次のスプライン関数)ですので,これを2回積分して係数を決定します.曲線の始点と終点ではその外側に接続されるべきセグメントがないので,自然スプライン曲線では境界条件としては両端点における2次微係数を0としたにより任意の点における曲線形状を定めています.

[2]ラグランジュ補間(n個の標本点において与えられた値をとるn−1次の多項式)・エルミート補間(標本点における微分係数まで一致する2n−1次の多項式)は計算量は少ないのですが,高次式であるため振動しやすい欠点を有しています.それに対して,3次スプライン補間は3次式で補間するため多項式補間よりも振動しにくく,変曲点も表現できる優れた性質をもつ補間法ですので,実験データの処理に有効です.

[3]3次のスプライン関数は歪エネルギーを最小にする曲線であり自在定規によって描かれた曲線は3次のスプライン関数に近似的に等しいこと,および,近似精度と計算量の兼ね合い(1次・2次では近似精度が不十分,3次を越えれば計算量がかなり増加する)からもっとも多く利用されています.

[4]パラメトリックスプライン

 x−y平面にある補間曲線がy=f(x)と表される場合すなわち一価関数について説明しましたが,この方法は,xのある値に対しyの値を複数もつような多価関数f(x,y)=0の表現はできません.多価関数となるようなデータに対しても扱えるようにするには独立変数x,yを用いる代わりにパラメータ表示[x=x(t),y=y(t)]の一意に定まるパラメータtを導入して補間曲線上の座標(x,y)に替わる新しい点列(t,x),(t,y)の各区間におけるの補間値を求めるようにします.

 このスプライン関数をパラメトリックスプラインと呼びます.一価関数とならない一般的な平面データに対しても利用可能です.なお,端点における境界条件を自然条件にすると始点と終点を重ねたときその点が尖点となってしまいます.そこで滑らかな閉曲線を求める場合には始点と終点で接線の方向が一致する周期条件を用いる必要があります.周期スプラインでは始点と終点が急な角度で結ばれることはありません.

===================================