■多角形連鎖(その6)

【1】三角形の重心

 三角形の3つの中線は一点で交わります.この交点が三角形の重心です.原点Oに対する三角形ABCの3頂点A,B,Cの位置ベクトルをそれぞれa,b,cとすれば,重心の位置ベクトルは(a+b+c)/3となります.三角形の形をした均一な板の重心は3つの中線の交点,すなわち重心にあります.この点(一様な三角形の重心)は3つの頂点の重心(a+b+c)/3,すなわち三角形の頂点におかれた3つの等しい質量の中心(物理的重心)に一致します.また,重心は3頂点に至る距離の2乗の和が最小となる点です.

 三角形の辺の中点同士を結ぶと互いの合同な4つの三角形に分割されます.この小さい三角形(中点三角形)の面積はもとの三角形の面積の1/4,周長は1/2に等しくなります.また,中点三角形の重心はもとの三角形の重心と一致します.

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【2】ヴァリニョンの平行四辺形

 四角形の中点を結んでできる四角形は平行四辺形である.この小さい平行四辺形の面積はもとの四角形の面積の1/2,周長は対角線の長さの和に等しい.四角形を対角線で2つの三角形に分け,中点連結定理を適用すればこのことがわかる.

 したがって,四角形の対辺の中点を結ぶ線分は互いに他を2等分することもわかる.

 この小さい平行四辺形の面積はもとの四角形の面積の1/2,周長は対角線の長さの和に等しい.それでは,また,四角形の4つの頂点に同じ質量を置いたときの重心は中点線の交点(ヴァリニョンの平行四辺形の中心)

  (a+b+c+d)/4

に一致する.同じ操作を次々に繰り返すと一連の平行四辺形ができるが,それらの重心ももとの四角形の重心と一致する.

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【3】ウィッテンバウアーの平行四辺形

 もとの四角形の各辺の3等分点をとり,隣り合った3等分点を結ぶと8角形になるが,この線分の延長上にできる交点を結んでも平行四辺形ができる.この平行四辺形はウィッテンバウアーの平行四辺形と呼ばれる.

 もとの四角形の重心はウィッテンバウアーの平行四辺形の中心と一致する.

(証)四角形を対角線で2つの三角形に分けると,三角形の重心はもとの四角形とウィッテンバウアーの平行四辺形の交点を結ぶ線分の中点となる.したがって,もとの四角形の重心はウィッテンバウアーの平行四辺形の対辺の中点を結ぶ直線上にあることがわかる.同様に,もうひとつの対角線で2つの三角形に分けると,もとの四角形の重心はウィッテンバウアーの平行四辺形の中心と一致することが結論される.

 ウィッテンバウアーの平行四辺形の面積はもとの四角形の面積の8/9,周長は対角線の長さの4/3に等しい.また,もとの四角形とウィッテンバウアーの平行四辺形が重なった部分の8角形の面積はもとの四角形の面積の7/9,ウィッテンバウアーの平行四辺形の面積の7/8に等しい.

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【4】円周四角形の角の2等分

 円周四角形の各角の2等分線は円周と交わる4点は長方形をなす(円周四角形の対角線が直交すれば,正方形になる).

 三角形の内角の3等分線の交点は正三角形になるという.モーレーの三角形がわずか100年前に発見されたというのは驚きである.そこで円周四辺形でも試してみることもできるだろう(練習問題とする).

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