■4次元正多胞体による空間充填と元素定理(その5)

 (その1)(その2)では4次元正120胞体の頂点をうまくとると,他の正5,8,16,24,600胞体をすべて作ることができる.その意味で,正120胞体は4次元の「万有正多面体」であることを説明した.

 3次元の正12面体の頂点からは正4面体と立方体を作ることができるが,正8面体と正20面体は面の中心を使わなければ作ることができないから,正120胞体ほど完全な万有正多面体ではないのである.5次元以上ではどうだろうか?

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 超立方体(頂点数2^n),正軸体(頂点数2n),正単体(頂点数n+1)の3種類のn次元正多胞体の包含関係を調べてみる.

[1]超立方体と正軸体

  2^n=k・2n

の形でなければならないことがわかる.kn=2^n-1より,nは(kも)2^mの形でなければならない.nは偶数.

[2]超立方体と正単体

  2^n=k・(n+1)

n+1は(kも)2^mの形でなければならない.nは奇数となり[1]と矛盾する.よって,n(≧5)次元超立方体は万有正多面体とはなり得ない.

[3]正軸体と正単体

  2n=k・(n+1),k≧2

より,(任意のn次元において)包含関係が成立することはあり得ない.

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 実は,超立方体の頂点をひとつおきにとると別の正多面体になるのは3次元・4次元の特殊性である(5次元以上の空間では正多面体ではなく,1種の準正多面体になる).

  2^n=2・2n → 4次元超立方体の頂点をひとつおきに結べば,正16胞体ができる.

  2^n=2・(n+1) → 3次元立方体の頂点をひとつおきに結べば,正4面体ができる.

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