■ベキ和の公式の整除性(その3)

【1】原始根とフェルマーの定理

 有限体Fpの0以外の元をaとします.このとき,aをp回足すとはじめて0になります.素数7を例にとって,F7でa=3を何回もたしてみると

  3+3=6

  3+3+3=6+3=2

  3+3+3+3=2+3=5

  3+3+3+3+3=5+3=1

  3+3+3+3+3+3=1+3=4

  3+3+3+3+3+3+3=4+3=0

このpを有限体Fpの「標数」といいます.

 また,aをp−1回掛けると1になります.F7において

  a\^n  1  2  3  4  5  6

   1   1  1  1  1  1  1

   2   2  4  1  2  4  1

   3   3  2  6  4  5  1

   4   4  2  1  4  2  1

   5   5  4  6  2  3  1

   6   6  1  6  1  6  1

最後の列はすべて1です.

 このように,pで割り切れない整数aに対して,フェルマーの(小)定理

  a^(p-1)=1  (mod p)

が成り立つというわけです.また,このことからa^(p-2)がaの逆元となることも理解されます.

  1/a=a^(p-2)

F7では,

  1/3=3^5=5,1/6=6^5=6

 この表において,1は1乗してはじめて1になりますが,2は3乗して,3は6乗して,4は3乗して,5は6乗して,6は2乗してはじめて1になります.何乗かして1になるとき,その最小のものを「位数」と呼びます.p=7のとき,a=1,2,3,4,5,6の位数はそれぞれ1,3,6,3,6,2ですが,ここで位数として現れる数はすべて6=7−1の約数です.一般にFpの位数はp−1の約数となります.

 また,pと互いに素な整数aがp−1乗してはじめて1になるとき,aを「原始根」といいます.F7においては3,5が原始根です.

 F5においては

  a\^n  1  2  3  4

   1   1  1  1  1

   2   2  4  3  1

   3   3  4  2  1

   4   4  1  4  1

より2,3が原始根となります.

 任意の素数について原始根rは少なくとも1つ存在します.1つとは限らないため,原始根rの選び方は1通りではありませんが,1つ選んで固定します.そしてFpにおける原始根rが与えられたとき,0以外のすべての元は,

  a=r^i   (i=0〜p-2)

の形に表すことができます.iを(rに関する)「指数」と呼びます.Fpの0以外のすべての元はrを生成元とする位数p−1の巡回群というわけです.

 F7において,原始根r=3とすると

   i  : 0,1,2,3,4,5

  a=r^i: 1,3,2,6,4,5

ですから,6の指数は3,1の指数は0ということになります.また,原始根としてr=5を選ぶと

   i  : 0,1,2,3,4,5

  a=r^i: 1,5,4,6,2,3

で,同様に6の指数は3,1の指数は0となります.

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【2】まとめ

 Fpにおける原始根aが与えられたとき,0以外のすべての元は,

  a^i   (i=0〜p-2)

の形に表すことができます.

 したがって,kをp−1で割り切れないものとすると各逆数1/1,1/2^k,・・・,1/(p−1)^k  (mod p)は,すべての剰余1,2^k,・・・,(p−1)^k  (mod p)をきっかり1回だけ覆うという意味で,再配列によって

  1+1/2^k+1/3^k+・・・+1/(p−1)^k

 =1+2^k+3^k+・・・+(p−1)^k  (mod p)

となります.

 また, 1,2,・・・,p−1は順序を無視すれば,法pに関する原始根をgとすると法pに関してg,2g,・・・,(p−1)gと合同,すなわち,1,2^k,・・・,(p−1)^k  (mod p)は,g,(2g)^k,・・・,((p−1)g)^k  (mod p)をきっかり1回だけ覆うという意味で,再配列によって

  1^k+2^k+3^k+・・・+(p−1)^k

 =g^k+(2g)^k+(3g)^k+・・・+((p−1)g)^k  (mod p)

となるのです.

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