■高次元正多面体の元素定理(顛末記・その5)

 インド生まれの数学者ラマヌジャンは,多くの公式や定理を発見し,神秘的な東洋の天才数学者とよばれていて,1日1つの割合で新しい公式または定理を発見したといわれています.もちろん,それには及びもつきませんが,私も月1の割合で新しい公式または定理を発見したいと勝手に願っています(あやかりたいものです).

 正多面体の第1の問題はまずどれだけの種類があるかということですが,それにはユークリッドの証明があります.これは素数が無限に存在すること・√2が無理数であることとともにギリシア数学のなかでも有名な定理です.

 それでは第2の問題はとなると

[Q]何種類かの凸多面体を使ってすべての正多面体を作りたい.その最小数は?  (正多面体元素問題)

でしょう.3次元正多面体の場合の元素問題は非常にうまくいって,元素数は4であるという結論が主張できました.正多面体数よりも少ないという点がミソです.

 3次元空間における問題を高次元空間でも考えるのは自然な発想でしょう.もちろんこのような問題意識が常に面白い結果を生み出すとは限りませんが・・・.実際,4次元以上の場合も3次元の場合と同じ方法で証明できれはよかったのですが,まったく煮えきらない結果しか得られませんでした.

 4次元以上の問題に3次元の判定法を使い,それで証明できれは強い意味で証明できたことになり,かっこいいのですが,いささか牛刀割鶏の感がありました.牛刀割鶏とは孔子の言葉「鶏を割くに焉んぞ牛刀を用いん」のことで,3次元の判定法は何となく無用の長物のような雰囲気でした.

 発想の転換が迫られたのですが,上限付き幾何を考えることによって一件落着.3次元のみならず,4次元も元素数が減少する特殊な次元であることが判明しました.

 最後に新しい公式または定理を発見する極意を紹介します.一言でいうと,誰も答えを知らない問題を創り,それを解けばよいのです.有名な未解決問題を探しそれを解くことも一案ですが,滅多にできることではありませんし,あまり勧められません.個人的には性悪女におぼれるようなもの,身の破滅になると戒めたいと思います,

 問題を創りそして問題を解くことを,もうひとつ論語から引用すると「学びて思わざれば則ち罔(くら)し,思いて学ばざれば則ち殆(あや)うし」そしてパスツールの「幸運は用意された心に宿る」という言葉はまさに至言だと思います.

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