■4次元正多胞体による空間充填と元素定理(その2)

 正120胞体の頂点をうまくとると,他の正5,8,16,24,600胞体をすべて作ることができる.その意味で,正120胞体は4次元の「万有正多面体」である.3次元の正12面体の頂点からは正4面体と立方体を作ることができるが,正8面体と正20面体は面の中心を使わなければ作ることができないから,正120胞体ほど完全な万有正多面体ではないのである.

 120÷5=24なので,一見正600胞体の120個の頂点からうまく選べば正5胞体が24個含まれても良いように見えるが,正600胞体の頂点を結んでも同じ中心をもつ正5胞体は作れない.4次元正多胞体の中で正5胞体は何か異端児である.

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【1】正120胞体

 4次元正120胞体の構成は4次元正正多胞体のなかでも最も厄介であるが,600個の頂点の座標は,σ=(3√5+1)/2,σ’=(3√5−1)/2とおくと,正600胞体の頂点を含む(±2,±2,±2,±2),(±4,0,0,0),(0,±4,0,0),(0,0,±4,0),(0,0,0,±4),(±2τ,±2,±2/τ,0)216点と(√5,√5,√5,1),(τ^2,τ^2,√5/τ,1/τ),(σ、1/τ,1/τ,1/τ),(τ√5,τ,1/τ^2,1/τ^2)に偶数個の負号をつけた点の置換256点,(σ’,τ,τ,τ),(3,√5,1,1)に奇数個の負号をつけた点の置換128点で与えられる.1辺の長さ√2(3−√5)=2√2/τ^2,外接球の半径4.

 ある頂点における長さLjの対角線の本数をNjとすると,

  L1=√(28−12√5),N1=4

  L2=√(12−4√5),N2=12

  L3=√(24−8√5),N3=24

  L4=2√2,N4=12

  L5=√(36−12√5),N5=4

  L6=√(20−4√5),N6=24

  L7=√(32−8√5),N7=24

  L8=4,N8=32

  L9=√(28−4√5),N9=24

  L10=√(12+4√5),N10=12

  L11=√(40−8√5),N11=24

  L12=2√6,N12=28

  L13=√(36−4√5),N13=24

  L14=√(20+4√5),N14=24

  L15=4√2,N15=54

  L16=√(44−4√5),N16=24

  L17=√(28+8√5),N17=24

  L18=2√10,N18=28

  L19=√(24+8√5),N19=24

  L20=√(52−4√5),N20=12

  L21=√(36+4√5),N21=24

  L22=4√3,N22=32

  L23=√(32+8√5),N23=24

  L24=√(44+4√5),N24=24

  L25=√(28+12√5),N25=4

  L26=2√14,N26=12

  L27=√(40+8√5),N27=24

  L28=√(52+4√5),N28=12

  L29=√(36+12√5),N29=4

  L30=8,N30=1

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【2】正5胞体

 正5胞体は(−σ’,τ,τ,τ),(τ,−σ’,τ,τ),(τ,τ,−σ’,τ),(τ,τ,τ,−σ’),(−2,−2,−2,−2)を結んでできる.辺の長さは,

  {2(σ’+τ)^2}^1/2=2√10

  {(σ’−2)^2+3(τ+2)^2}^1/2=2√10

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【3】正600胞体

 一方,正600胞体は正24胞体の頂点(±2,±2,±2,±2),(±4,0,0,0),(0,±4,0,0),(0,0,±4,0),(0,0,0,±4)24点と(±2τ,±2,±2/τ,0)の偶置換で表される96点,合計120点を結んでできる.1辺の長さ2√(6−2√5)=2(√5−1)=4/τ,外接球の半径4.

  L1=2√(6−2√5),N1=12

  L2=4,N2=20

  L3=2√(10−2√5),N3=12

  L4=4√2,N4=30

  L5=2√(6+2√5),N5=12

  L6=4√3,N6=20

  L7=2√(10+2√5),N7=12

  L8=8,N8=1

 対角線の長さは2√10となり得ないことから,正600胞体の頂点を結んでも同じ中心をもつ正5胞体は作れないことがわかる.

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