■4次元正多胞体の包含関係

 6種類ある4次元正多胞体の包含関係を考えよう.興味深いことに,正120胞体の頂点をうまくとると,他の正5,8,16,24,600胞体をすべて作ることができる.

 その意味で,正120胞体は4次元の「万有正多面体」である.3次元の正12面体の頂点からは正4面体と立方体を作ることができるが,正8面体と正20面体は面の中心を使わなければ作ることができないから,正120胞体ほど完全な万有正多面体ではないのである.

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【1】標準的な直交変換

[1]正24胞体の頂点の座標は

  (±1,±1,±1,±1)・・・正8胞体の頂点

  (±2,0,0,0),(0,±2,0,0),(0,0,±2,0),(0,0,0,±2)・・・正16胞体の頂点

の24点である.

 正24胞体の構成には他の方法もあり,(±1,±1,0,0)を置換した24点から作るものである.これは正8胞体の2次元面24個の中心をとったものである.

[2]4次元正120胞体の構成は4次元正正多胞体のなかでも最も厄介であるが,600個の頂点の座標は,Coxter, Regular Polytope (改訂版, Dover, 1973),p157によれば

  (±2,±2,0,0),(±√5,±1,±1,±1),(±τ,±τ,±τ,±1/τ^2),(±τ^2,±1/τ,±1/τ,±1/τ)の置換と(±τ^2,±1/τ^2,±1,0),(±√5,±1/τ,±τ,0),(±2,±1,±τ,±1/τ)の偶置換で与えられると記述されている.

 その際,

[3](±2,±2,0,0)を置換した24点

を,

[4](±4,0,0,0),(±2,±2,±2,±2)の置換の計24点

にうつす標準的な直交変換を考える.

 [3]から互いに直交する代表的な4点(2,2,0,0),(2,−2,0,0),(0,0,2,2),(0,0,2,−2)の座標を縦に並べて書く.すなわち,

  [2, 2,0, 0]

  [2,−2,0, 0]

  [0, 0,2, 2]

  [0, 0,2,−2]

をとり,これを[4]の

  [4,0,0,0]

  [0,4,0,0]

  [0,0,4,0]

  [0,0,0,4]

にうつす行列を計算すると,変換行列Rは

  [1, 1,0, 0]

  [1,−1,0, 0]

  [0, 0,1, 1]

  [0, 0,1,−1]

になる.

 これは直交変換して√2倍する変換であるが,この変換行列はひとつの例であって,他にも多数の取り方がある.

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【2】正120胞体の伸縮と回転

 その選び方はいろいろあるが,

[0](±2,±2,0,0),(±√5,±1,±1,±1),(±τ,±τ,±τ,±1/τ^2),(±τ^2,±1/τ,±1/τ,±1/τ)の置換と(±τ^2,±1/τ^2,±1,0),(±√5,±1/τ,±τ,0),(±2,±1,±τ,±1/τ)の偶置換の各点は,この行列によってどれかの点にうつされる.

 頂点全個数を書くわけにはいかず,ここには代表的な7点を書くが,

  R(2,2,0,0)→(4,0,0,0)

  R(√5,1,1,1)→(2τ,2/τ,2,0)

  R(τ,τ,τ,1/τ^2)→(2τ,0,2,2/τ)

  R(τ^2,1/τ,1/τ,1/τ)→(2τ,2,2/τ,0)

  R(τ^2,1/τ^2,1,0)→(3,√5,1,1)

  R(√5,1/τ,τ,0)→((3√5−1)/2,τ,τ,τ)

  R(2,1,τ,1/τ)→(3,1,√5,1)

 まとめて記述すると

[1](±2,0,0,0)の置換

[2](±τ,±1,±1/τ,0)の置換

[3](±1,±1,±1,±1)の置換

[4](√5/2,√5/2,√5/2,1/2),(τ^2/2,τ^2/2,√5/2τ,1/2τ),(σ/2,1/2τ,1/2τ,1/2τ),(τ√5/2,τ/2,1/2τ^2,1/2τ^2)およびこれに偶数個の負号をつけた点の置換

[5](σ’/2,τ/2,τ/2,τ/2),(3/2,√5/2,1/2,1/2)およびこれに奇数個の負号をつけた点の置換にも表される.ここで,

  σ=(3√5+1)/2,σ’=(3√5−1)/2

 これで誤りはないように思う(しかしもしご不審の点がありましたらご注意賜れば幸いです).そして,4次元正多胞体の包含関係を決定するのには[0]でなく,[1]〜[5]が大変有用であったことを申し添えておきたい.

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