■n次元正多面体の辺と対角線(その35)

 n番目の調和数を

  Hn=1/1+1/2+1/3+1/4+・・・+1/n

と定義すると,H1=1,H2=3/2,H3=11/6,・・・,H∞=∞となります.

 (その34)の

  SS=n2^(n-3)・Σ(n,k)/k

の非整除性の証明は,結局

(問)n>1ならば,Hn は整数にはならないことを示せ.

の証明とほとんど類似のものとなった.nが素数ならもちろん整数でない.合成数でも奇数の素因子があれば分母に残る.これはおおざっぱですが,これを精密化すれば完全な証明になりそうです.

 念のため,非整除性の数値計算を阪本ひろむ氏にお願いしたところ,以下のような回答が届きました.

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  f(n)=n2^(n-3)・Σ(n,k)/k

とおく.

  f(1)=0.25,f(2)=2.5

  f(3)=14.5,f(4)=68.6667

はよいとして,問題はf(5)以降である.

  nC1+nC2/2+nC3/3+・・・+nCn/n>(2^(n+1)−1)/(n+1)−1より,f(n)はほぼ2^2(n-1)のオーダーとなり,n→∞のとき発散する.それでもinderteminate not integerとならずに,10000>n≧1ではすべて非整数と判定された.

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 (その33)ではウォルステンホルム素数を紹介したので,フェルマー・ワイルス定理と関係するヴィーフェリッヒ素数と正則素数を掲げておきたい.

[1]ヴィーフェリッヒ素数

 フェルマーの小定理より(2^(p-1)−1)/pは整数となるが,非常に稀にこの整数がpの倍数になることがある.そのとき,pをヴィーフェリッヒ素数という.ヴィーフェリッヒ素数はp=1093,3511が知られている.

 なお,(3^(p-1)−1)/pが整数となるpとしてp=11,1006003が知られている.

[補]ヴィーフェリッヒの定理

 フェルマー方程式x^p+y^p=z^pが非自明解をもつためには,pはヴィーフェリッヒ素数であることが必要である.

  (2^(p-1)−1)/p=0   (mod p)・・・Wieferich判定基準

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[2]正則素数

 正則素数pはBp-3までのベルヌーイ数Bkの分子を割り切ることのできない素数として定義されていて,クンマーの定理によって正則素数であるすべてのnに対してフェルマー予想が成立すること,たとえば,100以下の非正則素数は37,59,67ですべてですから,この3つの数以外では100までのnに対してフェルマー予想が正しいことが証明されたことになります.非正則素数は無限に多く存在し,691も非正則素数のひとつです.そして,クンマーの定理を精密化したもの(詳しく正確にいったもの)は岩澤理論と呼ばれています.

 また,x以下の非正則素数の数をI(x)と記すと

  I(x)/π(x)〜1-exp(-1/2)=0.39346・・・

正則素数の密度はexp(-1/2).正則素数が無限個あることはいまだ証明されていない.一方,イェンゼンは非正則素数が無限個あることを証明した.

 マッキントッシュはベルヌーイ数Bp-3の分子を割り切る素数はウォルステンホルム素数であることを示した.ウォルステンホルム素数でいまのところ既知のものは16843と2124679だけで,p=16843,2124679はBp-3の分子を割り切るのである.

[補]クンマーの定理

 フェルマー方程式x^p+y^p=z^pが非自明解をもつためには,

  Bk=0   (mod p)・・・Cauchy-Genocci判定基準

  0<k<1/2(p−3),B1=0,・・・,Bp-3=0

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