■平行体の体積とグラミアン(その22)

 (その19)に対して,阪本ひろむ氏より以下のような疑念が寄せられた.

[1]nを空間の次元とすると,(ai,aj)=det(A)^2となるのは,n×nのときであり,それ以外では成り立たない(佐武一郎「線型代数学」)

[2]ベクトルa1,a2,・・・,anがあるとき,det((ai,aj))=0であるための必要十分条件は,a1,a2,・・・,anが一次独立でないということである.このケースではn次元空間内にn+1個のベクトルがあるので一次独立ではありえない.つまり行列式=0が常に成り立つ.

[3]おそらく立方体の射影か何かを考えていると思うが,ひとつのベクトルが一次従属になるからグラム行列式は0となる.再考,問題の見直しを乞う.

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 平行体の面積・体積はグラミアンの平方根に等しくなりますが,座標を使って表せば,n+1個の点の座標に(1,1,1,・・・,1)を加えて作られる(n+1)次の行列式の絶対値になります.

  |S|=|1 x1 y1|   |V|=|1 x1 y1 z1|

      |1 x2 y2|       |1 x2 y2 z2|

      |1 x3 y3|       |1 x3 y3 z3|

                     |1 x4 y4 z4|

 原点が含まれるときは,

  |S|=|x1 y1|   |V|=|x1 y1 z1|

      |x2 y2|       |x2 y2 z2|

                   |x3 y3 z3|

のように展開されます.

 なお,これらはそれぞれn次元単体の体積のn!倍になりますから,三角形面積,四面体の体積は,

  S’=S/2

  V’=V/6

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 d次元空間内のベクトル配置V={v1,・・・,vn}に対して,その平行多面体の体積は

  vol(V)=2^d・Σ|det(v1,・・・,vn)|

で与えられる.すなわち,(n,d)個の項をもつこの公式は複体にも用いることができる.

 今回の場合,n次元空間内にn+1個のベクトルがあるので,順序を考慮した分割を考えると,(n+1,n)個の項をもつことになる.

  (1,2,3,・・・,n−1,n)

  (1,2,3,・・・,n−1,n+1)

  (1,2,3,・・・,n,n+1)

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・

  (1,2,4,・・・,n,n+1)

  (1,3,4,・・・,n,n+1)

  (2,3,4,・・・,n,n+1)

また,置換多面体では切断単体の体積の(d+1)!倍,正軸体版では2^dd!倍が求める体積となる.

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