■平行体の体積とグラミアン(その18)

 コラム「n次元の立方体と直角三角錐(その75)」では

[1]置換多面体: Nk^(n)=n+1Ck+1

[2]正軸体版 : Nk^(n)=2^(k+1)nCk+1

として,面数公式は

  fk^(n)=Σ(j=0~k)Nj^(n)f(k-j)^(n-1ーj)   (k≦n−2)

ときれいな形にまとまった.また,fn^(n)=1とすれば(k≦n−1)とすることもできる.先人達も苦心した難題はこれで完結.

 次はこれらの体積公式を漸化式の形で求めてみたいとして始まったのが,本シリーズである.

[1]置換多面体の体積公式

  Nk^(n)=n+1Ck+1

  Hk=hkS/√2={(k+1)(n−k)(n+1)/8}^1/2

  Vn=N0Vn-1H0/n+N1Vn-2H1/n+・・・+Nn-2Vn-2H1/n+Nn-1Vn-1H0/n

[2]正軸体版の体積公式

  Nk^(n)=2^(k+1)nCk+1

  Hk=hk/2ω={(k+1)/8}^1/2(2n−k−2+√2)

  Λn=N0Λn-1H0/n+N1Λn-2H1/n+・・・+Nn-2Vn-2Hn-2/n+Nn-1Vn-1Hn-1/n

という結果が得られたが,気にかかる点はまだまだある.

 たとえば,正軸体版の場合,nが奇数のときの中央項はn−[(n+1)/2]次置換多面体柱柱と正軸体版柱柱になること.そして,そもそも,正軸体版になぜ置換多面体が登場するのか等々.

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【1】正軸体版における中央項の割り当て

 5次元正軸体版は10個の4次元正軸体版+40個の3次元正軸体版柱+80個の((2次元正軸体柱)柱=八角柱柱,(2次元置換多面体柱)柱=六角柱柱)+80個の3次元置換多面体柱+32個の4次元置換多面体となる.

 3次元正軸体版である大菱形立方八面体は8枚の八角形と6枚の六角形と12枚の正方形からなるが,8枚の正八角形+12枚の正方形+8枚の六角形,すなわち,2次元正軸体版+(1次元正軸体版柱=正方形=1次元置換多面体柱)+2次元置換多面体であるから問題を生じなかったでのあるが,5次元のときの中央項80個が八角柱柱x個と六角柱柱y個にどのように割り当てられるのだろうか? 置換多面体の場合とは違って,一般にnが5以上の奇数のとき,中央項の割り当てが不明である.

 この多面体は正軸体β5あるいは同じことではあるが超立方体γ5を切頂・切稜することによって構成することができる.したがって,超立方体γ5を切頂・切稜すると,32個の4次元置換多面体+80個の3次元置換多面体柱+80個の((2次元置換多面体柱)柱=六角柱柱,(2次元正軸体柱)柱=八角柱柱)+40個の3次元正軸体版柱+10個の4次元正軸体版となる.

 (その12)では,中央項80個が八角柱柱40個と六角柱柱40個に割り当てられるものと考えたが,そうはならないようである.

 ところで,超立方体の面数公式

  Nk^(n)=2^(n-k)nCk

の双対をとると,正軸体の面数公式

  Nk^(n)=2^(k+1)nCk+1

が求められる.正軸体の面数公式Nkは双対多面体である超立方体のNn-k-1となるわけである.

 また,超立方体γn-1をその空間に垂直に動かすとγnができるから,漸化式

  Nk^(n)=2Nk^(n-1)+Nk-1^(n-1)

が成立する.したがって,正軸体では

  Nk^(n)=2Nk-1^(n-1)+Nk^(n-1)

が成立する.

 このことから,5次元正軸体版では,中央項80個が八角柱柱48個と六角柱柱32個に分配されると考えることができるだろう.

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【2】分配法則つき正軸体版の体積公式

  Nk^(n)=2^(k+1)nCk+1

とおくと,正軸体版の体積公式は

  Λn=N0Λn-1H0/n+N1Λn-2H1/n+・・・+Nn-2Vn-2Hn-2/n+Nn-1Vn-1Hn-1/n

 ただし,nが奇数のとき,中央項は

  m=[(n+1)/2]

  (2Nm-1^(n-1)Λn-m+Nm^(n-1)Vn-m)Hm-1/n

すなわち,n−m次置換多面体柱柱と正軸体版柱柱になる.

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