■スターリングの公式の図形的証明?(その24)

 3次元では切頂八面体の体積はそれに外接する立方体の半分であることはよく知られている.この性質は任意の次元についても成り立つのであるが,そのことを知っている人はたとえいたとしてもごくわずかであろう.また,このことから4次元では正24胞体の体積はそれに外接する立方体の半分であることがわかる.

 一方,3次元では菱形十二面体(準正多面体の双対多面体)の体積はそれに内接する立方体の2倍であることもよく知られている.菱形十二面体は3次元立方体の8頂点と正八面体の6頂点を結んでできる多面体である.

 4次元空間でこのまねをして,4次元立方体の16頂点と正16胞体の8頂点を結ぶと正24胞体になるが,4次元空間の特殊性からこの図形が本当に正多面体になるわけである.

 今回のコラムでは,正24胞体の体積がそれに内接する4次元立方体の2倍になるかどうかを調べてみたい.

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【1】正24胞体の計量

 正24胞体の座標は,正8胞体の頂点(±1,±1,±1,±1)と正16胞体の頂点(±2,0,0,0),(0,±2,0,0),(0,0,±2,0),(0,0,0,±2)からなる.

 これを24個の正八面体錘に分解する.

  (±1,±1,1,1),(0,0,2,0),(0,0,0,2)

はその代表的な正八面体の6頂点である.1辺の長さ2であるから,その体積は

  (2√2)^3/6

また,その中心は(0,0,1,1)であるから,(0.0.0.0)からの距離は√2.

 したがって,正24胞体の体積は

  (2√2)^3/6・√2/4・24=32

 それに対して,正8胞体の体積は2^4=16であるから,正24胞体の体積がそれに内接する4次元立方体の2倍になることが確かめられた.

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【2】5次元空間にて

 5次元空間でこのまねをしようとしても,うまくいきません.5次元立方体の頂点(±1,±1,±1,±1,±1))と5次元正軸体の頂点(±2,0,0,0,0),(0,±2,0,0,0),(0,0,±2,0,0),(0,0,0,±2,0),(0,0,0,0,±2)から10頂点

  (±1,±1,±1,1,1),(0,0,0,2,0),(0,0,0,0,2)

をとると,1辺の長さが2と√5の一種の準正多面体のようなものになりますが,4次元正軸体(頂点数8)ではなく,体積計算がままなりません.

 7頂点(±1,±1,1,1,1),(0,0,2,0,0),(0,0,0,2,0),(0,0,0,0,2)をとっても何ら事情は変わりません.

 これまで体積公式が知られている高次元多面体は,

  正単体αn,正軸体βn,超立方体γn,超球Bn

それに標準単体Δn,角錐Pyrnを加えても少数にすぎないのです.

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