■菱形多面体(その21)

【1】1種類の菱形からなる菱形多面体

 合同な菱形だけでできている多面体を菱形多面体と呼びます(以下ではこの菱形六面体A6,O6を除いて考えることにします).ケプラーは複合多面体から対角線の比が白銀比になっている菱形十二面体と対角線の比が黄金比になっている菱形三十面体を発見しました.

 ケプラーは,すべての面が合同な菱形である菱形多面体はこれら以外にはないことを証明しようとしたのですが,実はあと2つ,1885年,フェドロフが発見した菱形二十面体と1960年にビリンスキーが発見した菱形十二面体第2種があります.これらはコクセターにより,A6(acute),O6(obtuse),B12(Bilinsky),F20(Fedrov),K30(Kepler)と名づけられていて,それぞれ3次元から6次元までの立方体の投影の外殻になっています.

 1種類の立体による空間充填形がもっと高い次元の立方格子の射影であるというのは本質的に正しく,立方体以外の単一多面体による空間充填体としては,菱形十二面体や切頂八面体がよく知られています.たとえば,切頂八面体には6組の平行な辺があり,6次元立方体の射影と考えることができます.同様に,菱形十二面体は4次元立方体を3次元空間に投影したもの,2次元充填図形である正6角形は3次元立方体を2次元平面に投影したもの,4次元空間充填30胞体は10次元立方体を4次元空間に投影したものとなっているわけです.

 菱形のすべての稜は2方向,菱形六面体のすべての稜は3方向,菱形十二面体では4方向,菱形三十面体では6方向を向いているのですが,菱形二十面体では5方向,菱形十二面体(第2種)では4方向を向いています.これらはn次元立方体を3次元空間に投影したものと考えることができます.菱形30面体は6次元空間における立方体の3次元版,菱形12面体は4次元空間における立方体の3次元版に相当するというわけです.

 一般にすべての稜がn方向を向くとき,面数はf=n(n−1)となります.

  f=n(n−1)=2,6,12,20,30,42,56,・・・

  e=2n(n−1)

  v=n(n−1)+2

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【2】2種類以上の菱形からなる菱形多面体

 菱形90面体は合同な菱形だけでできている菱形多面体ではありませんが,対角線の長さの比が1:τ^2(2.618)の菱形30枚と白銀菱形60枚から構成される美しい形の多面体です.菱形90面体は10次元空間における立方体の3次元版に相当します.

 また,菱形132面体は3種類の菱形からなり,12次元空間の立方体を3次元空間に射影したものに相当する多面体です.

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【3】秋山仁の菱形12面体(第3種)

 合同な菱形だけでできている多面体は菱形30面体までで,42面以上の菱形多面体は2種類以上の菱形からなります.ところが,最近,秋山仁先生は2種類の菱形からなる12面体を発見されました.

 逆は必ずしも真ならず,2種類以上の菱形からなる多面体は面数が30以下でも存在するというわけです.その多面体は幾何学的に重要な意味をもっている多面体らしいのですが,詳細は知りません.わかり次第レポートしたいと考えていますが,とりあえず,菱形12面体(第3種)と名付けておきます.

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