■平行体の体積とグラミアン(その9)

 {3,・・・3,3}(1,・・・,1,1)系と{3,・・・3,4}(1,・・・,1,1)系の体積公式については,まだ一般式を得ていません.次はこれらの体積公式を求めてみたいと思います.

 平行体の体積は行列式(グラミアン)で与えられることから,ゾノトープの体積は平行体に分解して,平行体の体積がグラミアンで与えられることを用いればよいのですが,とはいえ,置換多面体およびその正軸体版についての効率的な体積計算法は十中八九ありません.そこで,直接計算する方針を変更して,漸化式の形で求めたいと思います.

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【1】漸化式による方法

 コラム「n次元の立方体と直角三角錐」シリーズで考えた方法を採用します.n次元単位置換多面体の体積をVn,その正軸体版の体積をΛnとおきます.

[1]n次元置換多面体では,正(n+1)胞体の(n+1)頂点にn−1次元置換多面体が配置されている.また,自己双対であるから,正(n+1)胞体の(n+1)胞にもn−1次元置換多面体が配置されている.また,正(n+1)胞体のn+1C2辺にはn−2次元置換多面体柱が配置されている.

   

[3]n次元正軸体版は,正2^n胞体の2n頂点にn−1次元正軸体版が配置されている.正2^n胞体の2^n胞にはn−1次元置換多面体が配置されている.また,正2^n胞体の4nC2辺にはn−2次元正軸体版柱が配置されている.

 これらの底体積がわかっているので,底面(超平面)までの距離がわかりさえすれば,あとは三角形の面積は底辺かける高さ割る2,三角錐になると底面積かける高さ割る3,四次元の三角錐なら底体積かける高さ割る4,五次元なら底四次元面積かける高さ割る5・・・.

 結局,

  Vn=uVn-1+vVn-2

  Λn=uΛn-1+vΛn-2+wVn-1

で与えられることがわかる.

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【2】超平面までの距離

 (その7)において,超平面までの距離を計算したが,辺の長さを用いて規格化する必要がある.これについては,地道に計算を続行するしかない.

[1]正軸体版の場合

 3次元の場合,x≧y≧z≧0なる点P(x,y,z)が与えられたとき,ずべての稜線の長さが等しくなるのは,点P(x,y,z)からx=y平面,y=z平面,z=0平面までの距離を等しくとると

  (x−y)/√2=(y−z)/√2=z

 → y=z+√2z

   x=y+√2z=z+2√2z

これらは,x+y+z=1上の点であるから代入すると,

  3z+3√2z=1 → z=1/(3+3√2)

また,点P(x,y,z)のz=0平面に対する鏡映は(x,y,−z)であるから,辺の長さは2z.

 4次元の場合は,点P(x,y,z,w)からx=y平面,y=z平面,z=w平面,w=0平面までの距離を等しくとると

  (x−y)/√2=(y−z)/√2=(z−w)/√2=w

 → z=w+√2w

   y=z+√2w=w+2√2w

   x=y+√2w=w+3√2w

これらは,x+y+z+w=1上の点であるから代入すると,

  4w+6√2w=1 → w=1/(4+6√2)

また,点P(x,y,z,w)のw=0平面に対する鏡映は(x,y,z,−w)であるから,辺の長さは2w

 一般には,S=n(n−1)/2として

 → nω+S√2ω=1,ω=1/(n+S√2)

   x=(1+(n−1)√2)ω,y=(1+(n−2)√2)ω,z=(1+(n−3)√2)ω,・・・,w=ω,辺の長さは2ω.

[a]胞心面までの距離

 胞心は(1/n,1/n,・・・,1/n)→1/√n

[b]辺心面までの距離

 切稜されていなければ辺心は(1/2,1/2,0,・・・,0)であるが,切稜されているので,中心は

  ((x+y)/2,(x+y)/2,0,・・・,0).

[c]頂点までの距離

 切頂されていなければ頂点は(1,0,・・・,0)であるが,切頂されているので,中心は(x,0,・・・,0).

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[2]置換多面体の場合

 3次元の場合,全体を1次元あげて4次元正単体の境界多面体

  V1(1,0,0,0)

  V2(0,1,0,0)

  V3(0,0,1,0)

  V4(0,0,0,1)

  x+y+z+w=1

をとるとしよう.

 x≧y≧z≧w≧0なる点P(x,y,z,w)が与えられたとき,ずべての稜線の長さが等しくなるのは,点Pからw=0平面,x=y平面,y=z平面,z=w平面までの距離が等しいときである.点Pをn−1次元境界多面体上の点(w=0)として,点P(x,y,z,0)からx=y平面,y=z平面,z=w平面までの距離を等しくとると

  (x−y)/√2=(y−z)/√2=(z−w)/√2

 → x=3z,y=2z,z=z,w=0

これらは,x+y+z+w=1上の点であるから代入すると,6z=1

 → x=1/2,y=1/3,z=1/6,w=0

一般には,S=n(n+1)/2として

 → x=n/S,y=(n−1)/S,z=(n−2)/s,・・・,w=0

また,点P(x,y,z,w)のx=y平面に対する鏡映は(y,x,z,w)であるから,辺の長さは√2|x−y|=√2/S.

[a]胞心面までの距離

 それぞれの胞心は

  c(A)=(1/n,1/n,・・・,1/n,0)

であるから,それと中心座標

  c(S)=(1/(n+1),・・・,1/(n+1))

の距離を求める.

[b]辺心面までの距離

 切稜されていなければ辺心は(1/2,1/2,0,・・・,0)であるが,切稜されているので,中心は

  ((x+y)/2,(x+y)/2,0,・・・,0).

それと中心座標

  c(S)=(1/(n+1),・・・,1/(n+1))

の距離を求める.

[c]頂点までの距離

 切頂されていなければ頂点は(1,0,・・・,0)であるが,切頂されているので,中心は(x,0,0).それと中心座標

  c(S)=(1/(n+1),・・・,1/(n+1))

の距離を求める.

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【3】まとめ

[1]正軸体版の場合

 規格化した後,

  Vn=uVn-1+vVn-2

  u=(n+1)(a+c)/n

  v=n+1C2b/n

[2]置換多面体の場合

 規格化した後,

  Λn=uΛn-1+vΛn-2+wVn-1

  u=2nc/n

  v=2^na/n

  w=4n+1C2b/n

で与えられる.

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