■立方体の面接触数

 1つの10円玉を机の上において,それと触れ合うようにかつお互いに重ならないようにして,6個の10円玉を置くことができます.1次元の球は区間であり,接触数は1次元のとき2個,2次元のとき6個であることは自明であって,幼稚園児でも解くことができそうです.

 10円玉の例からわかるようにτ2=6ですが,n≧3のとき,τn はどうなるでしょうか? 3次元の球の最大接触数τ3については,1694年にニュートンとグレゴリーの間で議論され,ニュートンは12を,グレゴリーは13を主張したといわれています.結局,ニュートンは12個が最大であるという証明ができず,グレゴリーも13個並べたわけではないので,「ニュートンの13球問題」と呼ばれるこの論争は引き和けに終わりました.

 1874年,ホッペが12個が最大であることという証明を試みましたが,不備があり,ようやく完全な証明がなされたのは1953年,ファン・デル・ヴェルデンとシュッテによってです.つまり,3次元空間内で1つの球には同時に12個の球しか接することができません.3次元のときは12個という解が得られるまで非常に長い年月がかかったことになります.

 4次元の場合はどうなるでしょうか? 4次元は大変難しく,2003年になって,ようやくロシアの数学者ミュージンよりτ4=24であることが証明されています.

 球の接触数問題,すなわち,n次元ユークリッド空間において1つの単位球に同時に接触することのできる単位球の最大個数τnの正確な値を決定する問題で,5次元以上の高次元については,高度に対称的な格子状配置になっている8次元(E8格子,コクセター・トッド格子,240個)と24次元(リーチ格子,196560個)の場合を除いて未解決であり,現在,正確な値が知られているのは,

  τ1=2,τ2=6,τ3=12,τ4=24,τ8=240,τ24=196560

の6つだけなのです.

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 複数の立方体の頂点を1つの点に集める場合,正四面体とは違って,空間を埋め尽くすことができます.最大8個の立方体を集めることができますが,これでは面白くないので,1つの単位立方体に同時に面接触することのできる単位立方体の最大個数(面接触数)について考えてみます.

 立方体の話にはいる前に,まず,正方形のブロック積みを考えてみましょう.3つの正方形が1点で出会うように平面を敷き詰めると,すべての正方形はは周りの6つの正方形に接することがわかります.お城の石垣でもタマネギの細胞でもこのような原則が成り立っています.

 次に,立方体の場合を調べてみます.1段目を敷き詰めたあと,2段目も1段目と同じように敷き詰めるが,1段目の立方体のすべての頂点を2段目の立方体で覆うようにずらして積み重ねると,1段目の立方体の上には4つの立方体が載ることになる.3段目も同様に行うと同じ段に6,上の段に4,下の段にも4で合計14の立方体に接することになります.(球の接触数12よりも多い).

 3次元では14の立方体に接触できることはわかりましたが,それでは4次元,5次元,・・・,n次元ではどうなるのでしょうか? これを知る人はたとえいたとしても非常に少ないであろうと思います.そこで証明抜きで次元論の敷石定理について解説すると,最大2(2^n−1)個接触することができます.すなわち,2次元では6個,3次元では14個,4次元では30個(超球の接触数24よりも多い),5次元では62個,6次元では126個となるのです.

 一方,立方体の単純立方格子状配置,すなわち角砂糖の箱の封を切ったときに見えるパターンについては説明するまでもありませんが,面接触数を数えると6,一般にn次元立方体では2nになります.それでは点接触数,辺接触数も加えたらどうなるでしょうか? 正方形を囲型に配置する場合は8,立方体では26,n次元立方体では3^n−1になります.

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