凸五角形によるタイル貼りの新しいタイプを4つも発見されたアメリカのマジョリー・ライスさんの真似をして、彼女が使ったであろう型紙をあれこれ並べ替えているうちに、既存の14種類のタイプ表には見当たらないパターンがいくつか見つかった。
まずその1は、
上の図のように、正図と反転図それぞれ4枚ずつ、合計8枚で平行移動の基本単位をなす。充填条件は、角度について、
2D=180度、つまりD=90度
A+C=180度
A+2B=360度
C+2E=360度
上の図では、A=100度、B=130度、C=80度、D=90度、E=140度で描いてある。辺長については、
a=c,b=c したがってa=b=c
である。
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形の科学会で長年小川泰先生とともに系統的に凸五角形タイル張りの研究をされている杉本晃久さん(ISTA)にこれを検討していただいた。つぎの図はライスさんの手書きのスケッチを集めたものだそうだ。
赤枠で囲まれた図に注目されたい。一個一個の五角形の姿が若干違うことはともかく、ライスさんのスケッチでは8枚からなる基本領域が明示されていない(7枚までしか図の範囲では確認できない)ので??という印象は免れないが、よくよく見ると確かに並び方は同じである。つまり、このパターンはライスさんが既に発見されていたものだということだ。ひょっとするとライスさんが見落としていたのかもしれないなどと浅はかにも思っていた私は、改めてライスさんの偉大さに敬服した次第である。
さて、あきらかに既存のタイプ表にはない並び方をしているにもかかわらず、あたらしいタイプとして登録されなかったということはライスさんが発見した当時すでに、これが既存のタイプに属すると評価されていたことを意味する。じつはこの作業が素人には容易ではない。そこを杉本さんが解決してくださった。
私が記号をつけた左図をまず反転させると真ん中の図になる。さらに一番上に位置する頂点をEとして反時計回りに記号をふりなおす。すると右のようになる。このように記号をつけかえた五角形を4枚1組で並べると次のようにタイプ2として知られているパターンに並べることができるというのだ。
言い換えると、タイプ2として知られている4枚1組のパターンをなす五角形の条件は
A+B+D=360度
a=d
であるが、これに以下の付加条件
2B=180度、つまりB=90度
E+2D=360度
C+2A=360度
a=d=e
を課すと、8枚1組の別のパターンが生み出せるということである。 (中川宏)
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