■スターリングの公式の図形的証明?(その9)

  [参]ベック,ロビンズ「離散体積計算による組合せ数学入門」シュプリンガー・ジャパン

には立方体,直角三角錐,正軸体(十字多面体)の他にも四角錐の離散体積とその母関数も掲載されているので,紹介したい.

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【1】四角錐の離散体積とその母関数

 n−1次単位立方体を底面とし,(0,0,,・・・,0,1)を頂点とするn次元四角錐を考えると,伸長多面体の離散体積は

  L(t)=Σ(k=0,t+1)k^n-1=(Bn(t+2)−Bn)/n

と書くことができる.ここで,Bn(x)はベルヌーイ多項式,Bnはベルヌーイ数である.Bn=Bn(0)である.

 また,L(t)の母関数は,オイラー数を用いて

  1+ΣL(t)z^t=1+Σ(t+1)^nz^t=ΣA(n-1,k)z^k-1/(1−z)^n+1

と書くことができる.

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【2】離散体積から連続体積へ

 母関数

  (hnz^n+hn-1z^n-1+・・・+h1z+1)/(1−z)^n+1

に対して,連続体積

  volP=(hn+hn-1+・・・+h1+1)/n!

が成り立つ.ΣA(n-1,k)=(n−1)!より1/nとなる.

 n=3の場合,「陽馬」と呼ばれる四角錐は単位立方体の3等分体で,体積1/3というわけである.

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【3】対称多項式

 n次多項式:f(x)=a0x^n+a1x^(n-1)+・・・+an-1x+an

が関係式

  f(x)=f(-1-x)(-1)^n

を満たすとき,n次対称多項式と呼ぶことにします.

  0次対称多項式:f(x)=c(定数関数)

  1次対称多項式:f(x)=x+1/2,f(x)=ax+a/2

  2次対称多項式:f(x)=ax^2+ax+c

  n次対称多項式:f(x)=ax^n+a(1+x)^n

などはその例です.すなわち,xの代わりに−1−xを代入すると,nが奇数のとき符号が交代,nが偶数のとき交代しない関数が対称多項式です.

  f(x)=f(-1-x)(-1)^n

の両辺を微分すると

  f'(x)=f'(-1-x)(-1)^(n-1)

  f"(x)=f"(-1-x)(-1)^(n-2)

(n-k)次導関数も対称多項式になります.x=0とおくと,n次多項式:f(x)=a0x^n+a1x^(n-1)+・・・+an-1x+anが対称多項式であるための必要十分条件は

  f(k)(0)=f(k)(-1)(-1)^(n-k) (k=0~n)

が成り立つことであることがわかります.そのためには係数の間に関係式

  {1+(-1)^(k-1)}ak=Σ(n-i,n-k)ai(-1)^i (k=0~n)

が成り立たねばなりません.

 また,s次対称多項式Fs(x)を適当に選んで

  f(x)=ΣcsFn-s(x)

がn次対称多項式になるためにはc2k+1=0が成り立たねばなりません.

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[1]ベルヌーイ多項式

  B0(x)=1,B2k+1(0)=0,B's(x)=Bs-1(x)

を満たすs次対称多項式をベルヌーイ多項式Bs(x)として定義します.この条件より帰納的にBs(x)を求めることができます.

 また,文献によって定義の仕方が異なるのですが,ここではベルヌーイ数を

  Br=(2r)!(-1)^(r-1)B2r(0)

として定義します.たとえば,

  B1=1/6,B2=1/30,B3=1/42,B4=1/30,B5=5/66,B6=691/2730

[2]オイラー多項式Es(x)

  E0(x)=1/2,E2k(0)=0,E's(x)=Es-1(x)

を満たすs次対称多項式をオイラー多項式Es(x)として帰納的に定義します.また,タンジェント数を

  Tr=(2r-1)!2^2r(-1)^(r-1)E2r-1(0)

で定義しておきます.

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【4】ベルヌーイ数

 ベルヌーイ数は,数多くの魅惑的な整数論的特性をもっていて,元来はベキ乗和の公式

  Σk^s=1^s+2^s+3^s+・・・+n^s

を求めるために1713年に考案されたものですが,次のようなベキ級数展開に現れる係数として定義されます.

  x/(1−exp(-x))=1+1/2x+Σ(-1)^(k-1)Bk/(2k)!x^2k

  x/(e^x−1)=ΣBnx^n/n!

 =B0/0!+B1/1!x+B2/2!x^2+B3/3!x^3+・・・

容易にわかるように

  x/(e^x−1)→1   (x→0)

が成立します.

 同じことですが,ベルヌーイ数は

  x/tanhx=xcoshx/sinhx

=1+B1/2!(2x)^2−B2/4!(2x)^4+B6/2!(2x)^6−・・・

 あるいは,x/tanhx=2x/(exp(2x)−1)+xより,

  x/(exp(x)−1)=1−1/2x+B1/2!x^2−B2/4!x^4+B3/6!x^6−・・・

の係数として得られます.

 また,定義より,ベルヌーイ級数は,べき級数

  (exp(x)−1)/x=1+1/2!x1 +1/3!x2 +1/4!x3 +・・・

の反転級数と考えることができます.

 exp(x)=1+1/1!x+1/2!x2 +・・・

ですから,

x/(exp(x)−1)

=x/(x+x^2/2!+x^3/3!+・・・)

=1/(1+x/2!+x^2/3!+・・・)

=1-(1+x/2!+x^2/3!+・・・)+(1+x/2!+x^2/3!+・・・)^2-・・・

=1-1/2x+1/6x^2-1/30x^4+・・・

 ベルヌーイ数については,再帰公式

  (B+1)^n-B^n=0

が成り立ちます.ただし,2項展開してからB^nをBnで置き換えることにします.

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 ベルヌーイ数と似たものにオイラー数やタンジェント数があります.オイラー数は,

  sechx=ΣEn/n!x^n

=E0/0!+E2/2!x^2+E4/4!x^4+・・・

で,べき級数

  coshx=1+1/2!x^2+1/4!x^4+1/6!x^6+・・・

の反転級数として定義されます.

 オイラー数では再帰公式

  (E+1)^n-(E−1)^n=0

が成り立ちます.

  E0=1,E2=-1,E4=5,E6=-61,E8=1385,E10=-50521,・・・

  E1=E3=E5=・・・=0

 一方,三角関数:tanxのベルヌーイ数を用いた展開

  tanx=Σ(-1)^(n-1)2^2n(2^2n−1)B2nx^(2n-1)/(2n)!

におけるx^(2n-1)/(2n−1)!の係数

  Tn=(-1)^(n-1)2^2n(2^2n−1)B2n/2n

はタンジェント数と呼ばれる正の整数です.

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