■雑多な数論問題(その4)

【1】グリーン・タオの定理(2004年)

 有名な素数定理(PT)は,漸近分布の形で

  π(x)〜x/logx

と表すことができます.素数は無限個存在し,そして等差数列{a+kn}にも素数は無限に含まれるのですが,素数pでa+knの形のものの分布問題がディリクレの算術級数定理です.

  π(x;a,n)〜C・x/logx   C=1/φ(n)

 算術級数定理は素数定理を精密化したもので,初項aの取り方にはよらないのですが,ここで,オイラーの関数φ(n)は1からn−1までの整数のうち,nと互いに素になるものの個数

  φ(n)=#(Z/nZ)

として定義されます.たとえば,n=7の場合,1,2,3,4,5,6なのでφ(7)=6,n=10の場合1,3,7,9がそうなのでφ(10)=4となります.

 ここで,素数のみからなる等差数列,

  a,a+d,・・・,a+(n−1)d

において,「任意に長いn個の素数の等差数列が存在する.」

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【2】素数をわたる積

 ゼータ関数は,オイラーの積表示

  ζ(s)=Π(1−p^(-s))^(-1)

を通して素数分布=#{n|素数p≦x}の問題に関係してきます.オイラーはオイラー積表示の関係式を用いて,素数が無限個あること,しかも自然数の中で相当な割合で現れるという事実を証明をしたのですが,これはギリシャ数学の単なる別証ではなく,その後の数学の発展に繋がるものだったのです.

 すべての素数をわたる無限積

  Π(p^2+1)/(p^2−1)=5/3・10/8・26/24・50/48・・・=5/2

 オイラーの証明は次の通り.

  Π(p^2+1)/(p^2−1)=Π(p^2+1)(p^2−1)/(p^2−1)^2=Π(1−1/p4)/(1−1/p^2)^2=ζ(2)^2/ζ(4)

ここで,

  ζ(2)=π^2/6,ζ(4)=π^4/90

より,

  Π(p^2+1)/(p^2−1)=5/2

 pnをn番目の素数とするとき,m項までの積

  Π(pn+1)/(pn−1)

が整数になるのは,m=1,2,3,4,8のとき以外にあるか?

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【3】佐藤の問題?

 ラマヌジャンの問題「2^n−7=x^2の整数解を求めよ」について,n=10^40までコンピュータ検索したが,ラマヌジャン自身が示した解

  n=3,4,5,7,15

以外の解を発見することはできなかったという.最近,これ以外の解はないことが証明された.

 エルデシュの問題「n!+1=x^2の整数解を求めよ」について,エルデシュ自身は3組の解,4!+1=5^2,5!+1=11^2,7!+1=71^2しかないと予想した.現在のところ有限個の解しかないのかどうかもわかっていない.n!+1=x^2の解はn=4,5,7のみか?

 これらの問題の由来はわからないが,

  「2(2^n−1)=2^n+2nの整数解を求めよ」

にはれっきとした幾何学的由来がある.グラフを描けばすぐに解は求まるが,この解をグラフを使わないで初等的に求めることはできるだろうか?

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  2^n−1=2^n-1+n

  2^n-1=n+1

[1]2^n-1=n+1  (mod2)

  n>1のとき,0=n+1 → n=2m−1

  n=1のとき,1≠n+1

[2]2^n-1=n+1  (mod4)

  n>2のとき,0=n+1 → n=4m−1

  n=2のとき,2≠n+1

  n=1のとき,1≠n+1

[3]2^n-1=n+1  (mod8)

  n>3のとき,0=n+1 → n=8m−1

  n=3のとき,4=n+1

  n=2のとき,2≠n+1

  n=1のとき,1≠n+1

[4]2^n-1=n+1  (mod16)

  n>4のとき,0=n+1 → n=16m−1

  n=4のとき,8≠n+1

  n=3のとき,4=n+1

  n=2のとき,2≠n+1

  n=1のとき,1≠n+1

となって(NGを除去すれば)n=3であることが示される.

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