■雑多な数論問題(その3)

【1】素数もいろいろ

[1]カニンガム素数

 p,2p+1の両方とも素数である素数pをソフィー・ジェルマン素数と呼ぶ.無限に存在すると予想されているが,証明されていない.対応する形p,2p−1の両方とも素数であるようなカニンガム素数は無限に存在するか?

[2]ウォルステンホルム素数

 p>3が素数ならば,既約分数

  1+1/2+1/3+・・・+1/(p−1)

の分子はp^2で割り切れる.p>3が素数ならば

  S=((p−1)!)^2(1+1/2^2+1/3^2+・・・+1/(p−1)^2)

はpで割り切れる.

 同様に,pが素数でp>5であるときに限り,

  1+1/2^3+1/3^3+・・・+1/(p−1)^3

の分子はp^2で割り切れる.pが素数でp>7であるときに限り,

  1+1/2^4+1/3^4+・・・+1/(p−1)^4

の分子はpで割り切れる.

 1819年,バベッジは

  (2p−1,p−1)=1   (mod p^2)

に気づきましたが,1862年,ウォルステンホルムは

  (2p−1,p−1)=1   (mod p^3)

を証明したことになります.

  1+1/2+1/3+・・・+1/(p−1)

の分子をウォルステンホルム数と呼びますが,ウォルステンホルムの定理は

  (2p−1,p)=1   (mod n^3)

が成り立つことを主張するものです.

 そこで,もし

  (2p−1,p)=1   (mod p^4)

が成り立つとき,pをウォルステンホルム素数と呼ぶことにしましょう.

 マッキントッシュはベルヌーイ数Bp-3の分子を割り切る素数はウォルステンホルム素数であることを示しました.ウォルステンホルム素数でいまのところ既知のものは16843と2124679だけです.p=16843,2124679はBp-3の分子を割り切るのです.

 ウォルステンホルム素数は無限に存在し,どれも

  (2p−1,p)=1   (mod p^5)

を満たさないと予想されています.

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【2】素数定理もいろいろ

 ガウスは,π(x)をx以下の素数の個数とすると,

  π(x)〜x/logx   (x→∞)

が成り立つだろうと予想しました.この予想はリーマンの研究を経て,1896年,フランスの数学者アダマールとプーサンによって証明されました.これを素数定理といいます.

[1]双子素数の分布に関しては,ハーディとリトルウッドによって,

  πtwin(x)〜C∫(2,x)dt/(logt)^2〜Cx/(logx)^2

ただし,pを3以上の素数として

  C=2Π(1−1/(p−1)^2)=1.32032・・・

と予想されています.

[2]10を原始根とする素数,たとえば,

  7,17,19,23,29,47,59,61,97,・・・

の密度について,アルティンは

  π10(x)〜Cx/(logx)

と予想しています.

 ただし,pを素数として,Cは

  C=Π(1−1/p(p−1))=0.37395・・・(アルティンの定数)

[3]n^2+1型素数

  πq(x)〜C∫(2,x)dt/(logt・√t)〜C√x/(logx)

と予想できます.ハーディとリトルウッドはCの値も決定しています.

  C=Π(1−χ(p)/(p−1))

  n^2+1=0 (modp)→ χ(p)=1

  n^2+1≠0 (modp)→ χ(p)=−1

  C=Π(1−(−1)^(p-1)/2/(p−1))=1.3727・・・

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【3】ゴールドバッハ予想

 ゴールドバッハ予想(4より大きいすべての偶数nは2つの奇素数の和で表すことができる)に関連して,偶数nを2つの奇素数の和で表す表し方の数をN2(n)とするとき,

  N2(n)〜Cn/(logn)^2Π((p−1)/(p−2))

  C=2Π(1−1/(p−1)^2)=2=1.32032・・・

で与えられるだろうと予想されています.

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【4】平方数の和(ランダウ・ラマヌジャン定数)

 すべての整数は4つ以下の平方数の和として表現することができます(ラグランジュの定理,1770年).

 ゴールドバッハ予想の素数のところを平方数で置き換えた類似問題:2つの平方数の和として表現できるx以下の整数の個数をn(x)とすると,ランダウとラマヌジャンはそれぞれ独自に

  n(x)〜Cx/(logx)^1/2   (x→∞)

  C={1/2Π(1/1−p^-2)}^1/2=0.764223653・・・

  pは4n+3型素数をわたる

が成り立つことを証明しました.

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【5】マルコフ方程式

 マルコフ方程式:x^2+y^2+z^2=3xyzは(1,1,1)(1,1,2)なる解をもち,(1,2,5)(1,5,13)(2,5,29)などすべての解はこの2つから生成される.

 x1^2+x2^2+・・+xn^2=ax1x2・・・xnは,a>nのとき解は存在せず,a=nのときすべての解は(1,1,・・・1)から生成される.1≦a≦nのとき,任意のaに対し解の有限集合が存在し,他のすべての解を生成する.

 それでは,ディオファントス方程式:x^3+y^3+z^3=3は(1,1,1)(4,4,−5)以外の解をもつか?

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