■n次元の立方体と直角三角錐(その60)

【1】オイラー・ポアンカレの定理

 2次元では,

  v−e=0,v≧3,e≧3

を満たす凸v角形(凸e角形)が存在する.

 3次元凸多面体の頂点,辺,面の数をそれぞれv,e,fとすると,

  v−e+f=2  (オイラーの多面体定理)

が成り立つ.これは3次元立体について,0次元の特性数であるv,1次元の特性数であるe,2次元の特性数であるfの関係を述べたものと解釈され,数学の10大定理の1つに挙げられるものである.

 それに対して,4次元では

  v−e+f−c=0   (シュレーフリ,1852年)

である.

 なお,

  v−e+f−c+g−h+i−・・・=1−(−1)^n

と一般化したものがオイラー・ポアンカレの定理である.右辺はnが奇数のとき2,偶数のとき0になる.

 fiをn次元多面体のi次元面の数とすると,

  f0=v,f1=e,f2=f,・・・

ここで,

  fn=1(多面体内部のn次元空間),f-1=1(空集合)

と定めると,オイラー・ポアンカレの定理は,

  −f-1+f0−f1+f2−・・・+(−1)^(n-1)fn-1+(−1)^nfn=0

で表されることになる.

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【2】正多胞体におけるオイラー・ポアンカレの定理

 fkをn次元多面体のk次元面の数とし,

  (f0,f1,・・・,fn-2,fn-1)

を構成要素とするn次元正多胞体では,組み合わせ的方法によって,k次元胞数fkが求められます.

 たとえば,正単体では

  fk=(n+1,k+1)

なのですが,k=n−1のときfk=n+1であって,胞数はn+1と計算されます.

 同様に,正軸体では

  fk=2^k+1(n,k+1),k=n−1のとき,fk=2^n

立方体では

  fk=2^n-k(n,k),k=n−1のとき,fk=2n

となります.

 もちろん,

  正単体:fk=(n+1,k+1)

  正軸体:fk=2^k+1(n,k+1)

  立方体:fk=2^n-k(n,k)

はオイラー・ポアンカレの定理:

  f0−f1+f2−・・・+(−1)^(n-1)fn-1=1−(−1)^n

すなわち,nが奇数なら2,偶数なら0を満たします.この定理は正多胞体に限らず,n次元凸多胞体について常に成立します.

[1]正単体

n=3:4−6+4=2

n=4:5−10+10−5=0

n=5:6−15+20−15+6=2

n=6:7−21+35−35+21−7=0

[2]正軸体・立方体

n=3:6−12+8=2

n=4:8−24+32−16=0

n=5:10−40+80−80+32=2

n=6:12−60+160−240+192−64=0

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【3】正多胞体におけるオイラー・ポアンカレの定理の双対?

 オイラー・ポアンカレの定理は交代和

  Σ(−1)^k(n+1,k+1)

  Σ(−1)^k(n,k)2^(n-k)

  Σ(−1)^k(n,k+1)2^(k+1)

であったが,ここでは正項の和

  Σ(n+1,k+1)

  Σ(n,k)2^(n-k)

  Σ(n,k+1)2^(k+1)

を考える.

  Σ(n+1,k+1)=2(2^n−1)   k=:0~n-1

n=3:4+6+4=14=2(2^3−1)

n=4:5+10+10+5=30=2(2^4−1)

n=5:6+15+20+15+6=62=2(2^5−1)

n=6:7+21+35+35+21+7=126=2(2^5−1)

は二項定理より簡単に導き出せるからよいにしても

  Σ(n,k)2^(n-k)=Σ(n,k+1)2^(k+1)

を閉じた形に表すことはできないのだろうか?

 与式はk=0から始まるので第0項から始まるように,パラメータをずらす必要はない.級数Σ(n,k)2^(n-k)の項比は

  ak+1/ak=2*(n-k)/(k+1)=-1/2*(k-n)/(k+1)

であるから,

  a0*1F0(-n;-1/2)

また,a0=2^nより

  2^n*1F0(-n;-1/2)

これより,超幾何級数であると同定される.ここで,参考文献にある公式を活用しよう.この超幾何級数は二項級数に帰着され

  1F0(a;x)=(1-x)^(-a)

  2^n*1F0(-n;-1/2)=2^n*(3/2)^n=3^n

k=nの場合を差し引いて

  Σ(n,k)2^(n-k)=3^n−1

 正軸体は立方体の双対であるから,正軸体・立方体ともに

n=3:6+12+8=26=3^3−1

n=4:8+24+32+16=80=3^4−1

n=5:10+40+80+80+32=242=3^5−1

n=6:12+60+160+240+192+64=728=3^6−1

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

[補]なお,級数Σ(n,k+1)2^(k+1)の項比は

  ak+1/ak=2*(n-k-1)/(k+2)

となって,パラメータをずらす必要を生ずる.

  ak/ak-1=2*(n-k)/(k+1)=-2*(k-n)/(k+1)

であるから,

  a-1*1F0(-n;-2)

また,a-1=1と約束すると

  1F0(-n;-2)=3^n

  Σ(n,k+1)2^(k+1)=3^n−1

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