■高次元における平行多面体元素定理(その3)

 これまでは超立方体の基本単体の切断によって,高次元における平行多面体の元素を得ていたが,4次元以上でも平行2(2^n−1)面体の頂点の座標が計算できるようになったことで大きく前進することができた.

 3次元では5種類の平行多面体をペンタドロンという1種類の元素から構成することができる.3次元の場合うまくいきすぎている感があるのだが,3次元のもつ特殊性の理由はなぜかを解明することができたのである.

===================================

【1】超立方体・正軸体の切頂型

 立方体は単独で空間全体を格子状に埋めつくすことができる.単純立方格子状配置,すなわち角砂糖の箱の封を切ったときに見えるパターンについてはこれ以上説明するまでもないだろう.3次元空間を立方体で格子状に充填しておく.そのあと各頂点の周りを少しずつ切頂していくと,

 立方体→切頂立方体→立方八面体→old Korean dice→切頂八面体→正八面体

のように遷移する.

 切頂立方体→立方八面体→old Korean dice→切頂八面体の遷移の間,すっと14面体であるが,切頂八面体のとき,隙間も同形になり,切頂八面体は空間充填図形であることがわかる.14は立方体(正八面体)の面数+頂点数である.

 n次元の立方体(頂点数2^n)の全頂点を

  超平面:x1+・・・+xn=n/2

で一斉に2^n個切り落として残る図形を考えてみよう.この図形は2^n+2n面体になるが,nが偶数のとき,この超平面はn/2次元面の中心を通る.その結果,

  {3,4}(1,1,0)=14面体(P1とP2の間を通る)

  {3,4}(0,1,0,0)=正24胞体(P2を通る)

  {3,3,3,4}(0,1,1,0,0)=42胞体(P2とP3の間を通る)

  {3,3,3,3,4}(0,0,1,0,0,0)=76胞体(P3を通る)

も空間充填図形であることがわかる.

 n次元の正軸体(頂点数2n)の全頂点を

  超平面:x=2/n

で一斉に2n個切り落として残る図形を考えてみよう.この図形は2^n+2n面体になるが,nが偶数のとき,この超平面がn/2−1次元面の中心を通ることは超立方体の切頂型よりも簡単にわかる.

 正軸体の切頂型,たとえば,正16胞体を24本の辺の中点で切った残りは24胞体である.

  {3,4}(1,1,0)=14面体(P0とP1の間を通る)

  {3,4}(0,1,0,0)=正24胞体(P1を通る)

  {3,3,3,4}(0,1,1,0,0)=42胞体(P1とP2の間を通る)

  {3,3,3,3,4}(0,0,1,0,0,0)=76胞体(P2を通る)

正軸体の基本単体の切断のほうが超立方体の基本単体の切断よりも簡単に扱えるのである.

===================================

【2】正単体の切頂・切稜型

  Σ(n+1,k+1)=2(2^n−1)

より,平行2(2^n−1)面体はn次元正単体の切頂・切稜型として構成することができる.

  2次元置換多面体:{3}(1,1)→六角形

  3次元置換多面体:{3,3,3}(1,1,1)→14面体

  4次元置換多面体:{3,3,3}(1,1,1,1)→30胞体

  5次元置換多面体:{3,3,3,3}(1,1,1,1,1)→62胞  6次元置換多面体:{3,3,3,3,3}(1,1,1,1,1,1)→126胞体

 また,頂点数(n+1)!で(n+1,2)次元の立方体のアフィン射影になっている平行2(2^n−1)面体を構成するには,置換多面体(permutahedron)を考えるのが有効である.

 すなわち,2次元置換多面体は正六角形,3次元置換多面体は切頂八面体である.置換多面体はvn=(n+1)!個の頂点とcn=2(2^n−1)個のn−1次元胞をもつ.また,置換多面体は(n+1,2)次元の立方体のアフィン射影で,単純ゾーン多面体である.

===================================

【3】まとめ

[1]n次元立方体の基本単体の切断体

[2]n次元正単体の基本単体の切断体

はプロポーションは異なるが,いずれも胞数(n+2)の多胞体である(2次元では3角形).

 3次元では[1][2]は同形となるが,これらはn≧4では別物と考えられる.そのように考えられる理由は

  2^n+2n=2(2^n−1)

が一致するのは,n=3のときだけだからである.

 [1]は2・2^n・n!個で立方体(2n面体),2^n・n!個で(2^n+2n)面体,[2]は2・(n+1)!個で平行2(2^n−1)面体を構成することができる.

===================================

【4】雑感

 正24胞体は菱形十二面体の拡張であるとともに,切頂八面体の拡張でもある.立方体の切稜型から平行多面体を構成することはできないだろうか?

===================================