■スターリング型不等式の証明と漸近評価(その3)

 コラム「シュタイナー数とシュタイナー点」で紹介した問題「y=x^1/xはx=eのとき最大値y=1.4446・・・をとる.」は等周問題(ディドーの問題)で知られる19世紀のスイス人数学者シュタイナーの出題した問題であるが,離散型不等式であるスターリング型不等式

  2/n!≧(2/n)^n

の連続版のようなものと考えることができる.

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【1】証明

 シュタイナーの関数を

  f(x)=x^1/x=exp(logx/x)=exp(g(x))

とかけば,

  y’=(1−logx)x^(1/x-2)

 1階微分y’=0となるのはx=eのときだけで,2階微分y”を求めればx=eは最大値を与えることがわかる.

  y”=(−3+2logx)/x^3

  (−3+2loge)/e^3<0

 あるいは,数値計算によって

  f(1)=1

  f(2)=2^1/2>f(1)

  f(3)=3^1/3>f(2)

  f(4)=4^1/4=2^1/2=f(2)

より,

  f(1)<f(2)<f(3)>f(4)

f(x)は2と4の間にあるxに対して最大になる.そしてx=eのとき最大値y=1.4446647861・・・(シュタイナー数)を与えることがわかる.

 また,

  g(x)=logx/x

について

  loge/e>logπ/π

であるから,

  e^π>π^e

 実際,

  e^π=23.14069・・・

  π^e=22.45915・・・

となるが,

  g(x)=logx/x

のグラフを描いてみればg(x)は幅のある最大値をもち,2つの式の値がほとんど同じくらいになることもわかるのである.

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【2】別証

 x≧0について,e^x≧x^eが成り立つ.  (等号はx=eのとき)

(証)y=x^ee^-x  (x≧0)とする.

  dy/dx=(ex^e-1−x^e)e^-x

  d^2y/dx^2=(e(e−1)x^e-2−2ex^e-1=x^e)e^-x

よりx^ee^-x≦1.  (x=eのときy=1)

 なお,y=x^ee^-xのグラフはα=e+1,β=1のガンマ分布の確率密度関数(の定数倍)になる.

  α=e+1,β=1

  mean=e+1,variance=e,mode=e

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【3】(0.99)^99と1/(1.01)^101はどちらが大きいか?

 e^π>π^eの場合よりも,両者はかなり接近した値をとるだろう.比較にはいろいろな解法が知られているが,

  (1+1/n)^n → e

が増加数列であることを使ってみたい.

 逆数をとると

  (0.99)^-99=(1+1/99)^99

  (1,01)^101=(1+1/100)^101>(1+1/100)^100

よって,

  (0.99)^99>1/(1.01)^101

 逆数の対数をとって

  log(0.99)^-99=99log(1+1/99)

  log(1,01)^101=101log(1+1/100)>100log(1+1/100)

として,関数f(x)=log(1+x)/xが減少関数であることを示してもよい.

  [参]平松豊一「初等数学アラベスク」牧野書店

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