■n次元の立方体と直角三角錐(その47)

 正四面体を切頂する場合,

[1]辺心に達するまで:切頂四面体

[2]辺心      :正八面体

[3]辺心から面心の間:切頂四面体の形

[4]面心      :正四面体

となる.

 原始的平行多面体の元素を求めるには,n次元正単体の基本単体を辺に垂直なn次元超平面で切断すればよいのだが,その際,必ずしも切頂でなく,場合によっては切稜や胞に平行に切った形など,正多胞体を切断することを考える.

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【1】正単体の切断による原始的平行多面体

 平行2(2^n−1)面体の元素を設計する場合,置換多面体(permutahedron)を考えるのが有効であると思われる.2次元置換多面体は正六角形,3次元置換多面体は切頂八面体で,それぞれ{3}(1,1),{3,3}(1,1,1)で,1番目の1は切頂,2番目の1は切稜,3番目は切面に対応している.

 形状ベクトルから縮退(contraction)しないことがわかる.すなわち,面数は

  Σ(n+1,k)=2(2^n−1)

であって,

  2次元置換多面体:{3}(1,1)→六角形

  3次元置換多面体:{3,3,3}(1,1,1)→14面体

同様に,

  4次元置換多面体:{3,3,3}(1,1,1,1)→30胞体

  5次元置換多面体:{3,3,3,3}(1,1,1,1,1)→62胞体

  6次元置換多面体:{3,3,3,3,3}(1,1,1,1,1,1)→126胞体

である.

 このことはP0,P1,・・・,Pn-1をすべて切断することを意味している.(その41)において,どの頂点を切頂しどの辺を切稜するのか問題になった.そこでは,P2を切断すると基本単体の間に隙間を生じてしまうという理由から

[1]P0,P1,・・・,Pn-2をすべて切断する

[2]P0,P1,・・・,P[(n−1)/2]を切断する

[3]P0を切頂し,P1を切稜する

の[3]を採用したのだが,本来は[1]が正しいようである.しかし,正単体の自己双対性から[2]だけで鏡映体を作ることができる.高次元の落とし穴にはまってしまったのである.

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【2】n次元正単体の基本単体の切断

 ここまでくれば(その22)で行った「n次元立方体の基本単体の切断」の議論『基本単体の半切体の胞数を数えるだけならば,座標にこだわらず,n次元単体(図形としてはすべての頂点が直接結ばれている完全グラフ)を切半したと考えてよい.j次元胞(j=0,1,・・・,n)の中心に相当する点をPjとするが,切半体はこれを半分ずつに分ける.すなわち,nが奇数(n=2k−1)のときは{P0,P1,・・・,Pk-1}と{Pk,Pk+1,・・・,P2k-1}というk個ずつに,nが偶数(n=2k)のときは中央のPkを通り{P0,P1,・・・,Pk-1}と{Pk+1,・・・,P2k-1}のk個ずつの組に分ける.したがって,2k−1次元のときに,中央の頂点Pkに関する補正を加えればよい.』とまったく同じものになることがわかる.

 すなわち,偶数次元では中央のPkを通り,奇数次元では中央の胞を二等分する.その結果,二項係数(n,r)において,n<rのときは0と約束すると,j次元胞の個数fjは

[1]nが奇数(n=2k−1)のとき,

  fj=(2k+1,j+2)+(k,j+1)−2(k+1,j+2)

  f0=k^2+k

  f1=k(k+1)(2k−1)/2

[2]nが偶数(n=2k)のとき,

  fj=(2k+2,j+2)+(k+1,j+1)−2(k+2,j+2)

  f0=k^2+k+1

  f1=k(k+1)(2k+1)/2

 2次元:(f0,f1)=(3,3)

 3次元:(f0,f1,f2)=(6,9,5)

 4次元:(f0,f1,f2,f3)=(7,15,14,6)

 5次元:(f0,f1,f2,f3,f4)=(12,30,34,21,7)

 6次元:(f0,f1,f2,f3,f4,f5)=(13,42,64,55,28,8)

 7次元:(f0,f1,f2,f3,f4,f5,f6)=(20,70,120,125,84,36,9)

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【3】まとめ

[1]n次元立方体の基本単体の切断体

[2]n次元正単体の基本単体の切断体

はプロポーションは異なるが,いずれも胞数(n+2)の多胞体である(2次元では3角形).3次元では[1][2]は同形となる.

 [1]は2・2^n・n!個で立方体(2n面体),[2]は2・(n+1)!個で平行2(2^n−1)面体を構成することができる.3次元では[1][2]は同形であったが,任意のn次元では[1]から平行2(2^n−1)面体を,[2]から立方体を構成できるかどうかは不明である.いずれにせよ,その形を構成することができるかどうかを理解するにはかなりの洞察力がいるようだ.

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