■シュタイナー数とシュタイナー点(その2)

 x≧0について,e^x≧x^eが成り立つ.  (等号はx=eのとき)

(証)y=x^ee^-x  (x≧0)とする.

  dy/dx=(ex^e-1−x^e)e^-x

  d^2y/dx^2=(e(e−1)x^e-2−2ex^e-1=x^e)e^-x

よりx^ee^-x≦1.  (x=eのときy=1)

 実際,

  e^π=23.14069・・・

  π^e=22.45915・・・

となり両者は驚くほど近いが,yのグラフを描いてみればyは幅のある最大値をもち,2つの式の値がほとんど同じくらいになることもわかるのである.

 ところで,yx^ee^-xのグラフはα=e+1,β=1のガンマ分布の確率密度関数(の定数倍)になる.

  α=e+1,β=1

  mean=e+1,variance=e,mode=e

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【1】ガンマ分布

  f(x)=1/(βΓ(α))・(x/β)^(α-1) ・exp(−x/β)

  0≦x<∞

  mean=αβ,variance=αβ^2,mode=(α-1)β

 ガンマ分布は2個のパラメータα,βを用いて,上式で定義される分布です.αが整数のときのガンマ分布はアーラン分布とも呼ばれます.そして,アーラン分布を自然数以外に拡張して得られる分布がガンマ分布です.

 上式で定義される分布を正規分布に倣ってG(α,β)と表現しますが,βはスケールの取り方に関係するパラメータ(尺度母数)で,厳密な意味では曲線の形に影響を及ぼすものではなく,単に縦横の座標を伸縮するのと同じ意味をもつにすぎません.

 αのほうは曲線の本質的な形を決定するパラメータ(形状母数)です.ガンマ分布の分布曲線はα≦1のときJ字型曲線となって単調減少の傾向をとります.とくに,α=1のときが指数分布

  f(x)=1/β・exp(−x/β)

になります.指数分布はガンマ分布の特殊な場合であり,G(1,β)に相当するというわけです.また,α>1のとき単峰型曲線となって,αが大きくなるほど幅の広いなだらかな分布で同時に非対称性が少なくなります.このように形状母数αは尺度母数βに比して重要な意義をもっています.

[1]指数分布から導き出された分布

 変数xiが指数分布f(x)=1/βexp(-x/β)=G(1,β)にしたがうとき,Σxiはアーラン分布G(n,β)にしたがいます.

 ガンマ分布は非対称で正にゆがんだ分布を表わすものとして,ワイブル分布,対数正規分布とともによく用いられていますが,対数正規分布と異なり,指数分布するデータから理論的に導き出された分布で,必然性の中からうまれたという経緯があります.すなわち,独立な指数確率変数の和の分布というのが,ガンマ分布の最も重要な性質です.

[2]αに関する再生性

 変数xiがガンマ分布G(αi,β)にしたがうとき,Σxiはガンマ分布G(Σαi,β)にしたがいます.すなわち,ガンマ分布にしたがう変数の和もガンマ分布になるという性質をもっています.

[3]ポアソン過程との関連

 確率過程とは各瞬間での変化の様相が不確定で,その確率だけが与えられているようなプロセスを指します.ポアソン分布はごく稀にしか起こらない現象の確率分布ですが,時間的にポアソン分布にしたがう確率過程がポアソン過程です.ポアソン過程の時間間隔の分布は指数分布に従いますから,アーラン分布は,ポアソン過程でm回事象が起こるまでの時間分布として求められます.

 ガンマ分布はその累積分布関数が不完全ガンマ関数となることから命名されていますが,基本統計量にガンマ関数が出現する分布やガンマ分布から派生する分布は,再生性をもつ寿命分布として利用されているほか,ランダムな故障発生や到着の時間間隔,サービス時間などの解析に用いられ,待ち行列論,通信トラフィック理論,信頼性工学,システム工学などの分野において重要な役割を果たしています.

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