■初等数学の問題(その3)

 天体力学において,2つの物体まではニュートン力学によって解析的な計算を行うことができ,互いに引力を及ぼしあっている二つの物体は楕円,放物線,双曲線のうちのいずれかの軌道になることが証明されています.

 例えば,地球から打ち上げた人工衛星の初速が秒速7.9km(第1宇宙速度)のとき円,それ以上で秒速11.2km(第2宇宙速度)以下のとき地球を焦点とする楕円,秒速11.2kmのとき放物線,それより速いときは双曲線を描くといった具合です.放物線軌道,双曲線軌道になると地球の重力圏を脱出し,もう地球に戻ってくることはありません.このように,人工衛星の運動ではニュートン力学は実にうまくあい,相対性理論を使う必要はまずありません.

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【1】第1宇宙速度

(Q)円:x^2+(y−r)^2=r^2と放物線:y=ax^2が原点のみで接するためのaの存在範囲は?

(A)xを消去すると

  y/a−y^2−2ry=0 → y=0,y=2r−1/a

原点のみで接するためにはy=2r−1/a≦0

よって,0<a≦1/2r

 地球の半径をR=6400km,重力加速度をg=10m/s^2とすると

  x=vt,y=gt^2/2 → y=gx^2/2v^2,a=g/2v^2

0<a≦1/2Rに代入すると,人工衛星は地球の引力圏から脱出可能な打ち上げ時の初速は

  v≧√gR=8km/s

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【2】第2宇宙速度

 万有引力定数をG,地球の質量をM,人工衛星の質量をmとすると,地球が人工衛星に及ぼす引力は

  F=GMm/R^2=mg → GM/R=gR

 また,(その2)より無限遠を基準とする位置エネルギーは

  U=−GMm/R

運動エネルギーはK=mv^2/2であるが,K+U<0でないと,人工衛星はいったん打ち上げたが最後,地球に戻ってくることができなくなってしまう.

  mv^2/2−GMm/R<0

  v<√2gM/R=√2gR=11km/s

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