■虹は2次曲線(その4)

 (その3)では,虹について正確に説明するためには微積分が必要になってくることを述べた.今回のコラムでは,虹と微分に関する部分を抜粋してみたい.

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【1】虹の反射と微分

 主虹では外側から内側に赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の順に見え,その外側に,色の配列が主虹と逆順の副虹がうすく見える.副虹では赤が弧の内側になる.

 主虹(下の方で明るく見える虹)は水滴の中で2回屈折し,1回反射した虹,副虹は2回屈折し,2回反射の虹である.i,rをそれぞれ入射角,反射角,D(i)を2回屈折し,1回反射した後の偏向角とすれば,

  sini=nsinr

  D(i)=π+2i−4r(i)

が成り立つ.

 微分を使って

  dD/di=2−4dr/di=2−4cosi/(ncosr)

したがって,極値を与える偏向角は

  1/4=cos^2i/(n^2−1+cos^2i)

  cosi=((n^2−1)/3)^1/2

  D(i)=π+2i−4arcsin(sini/n)

 n=4/3(水の屈折率)を代入すると,

  i=arccos√7/27=59.4°

  D(i)=138°

その補角180°−132°=42°が観測者を頂点とし,太陽とを結ぶ直線を軸とする虹の円錐の半頂角である.

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 副虹は2回屈折し,2回反射の虹である.一般に,内部でk回反射した場合は,

  dr/di=1/(1+k)

より

  (k+1)^2cos^2i=n^2cos^2r

三角関数とスネルの法則により

  (k+1)^2cos^2i=n^2−1+cos^2i

すなわち,cosiについての2次方程式を解くと

  cosi=((n^2−1)/k(k+2))^1/2

が得られる.

 また,

  d^2D/di^2=2(k+1)(n^2−1)tanr/n^2cos^2r>0

  D(i)=kπ+2i−2(k+1)arcsin(sini/n)

が成り立つ.

 副虹についてはk=2であるから

  D(i)=2π+2i−6r=2i−6r(mod 2π)

      =2i−6arcsin(sini/n)

  dD/di=2−4dr/di=2−6cosi/(ncosr)

  1/9=cos^2i/n^2(1−sin^2r)=cos^2i/(n^2−sin^2i)

  cosi=((n^2−1)/8)^1/2

n=4/3(水の屈折率)を代入すると,

  i=arccos√7/72=71.8°

  D(i)=−129°

主虹の補角は180°−132°=42°であったが,副虹では51°となり,主虹より9°上の空に現れることになる.

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 さらに高次(3次,4次,・・・)の虹が現れることもある.3次の虹についてはk=3であるから

  cosi=((n^2−1)/15)^1/2

n=4/3(水の屈折率)を代入すると,

  i=arccos√7/135=76.84°

  r=46.91°

  D(i)=318.4°

すなわち,観測者の背後で,副虹よりも上空にある.しかし,虹の光自体が弱く,薄くてほとんどみられることはない(副虹の明るさは主虹の43%,3次の虹の明るさは主虹の24%にすぎない.レーザー光線で人工的に作られた虹であれば,k=20までの高次の虹を見ることができる).

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 このことをもっと丁寧に調べることにしよう.水滴の半径を1,屈折率をn,入射光線と水滴の中心との距離をa,反射光線と入射光線の間の角度(虹角)をθとすると,平面幾何学的に,1回反射の虹では

  θ=4arcsin(a/n)−2arcsin(a)

2回反射の虹では

  θ=−4arcsin(a/n)+2arcsin(a)+π

となることが示される.

 一般に,奇数回反射した場合は

  θ=2(r+1)arcsin(a/n)−2arcsin(a)

偶数回反射した場合は

  θ=−2(r+1)arcsin(a/n)+2arcsin(a)+π

となる.

 散乱角θをaで微分すると

  a=√(4−n^2)/3   (主虹)

  a=√(9−n^2)/8   (副虹)

でθは最大になる.

 n=4/3とおくと,主虹はa=0.86で最大値42°,副虹はa=0.95で最大値51°をとるが,どちらからの散乱光もまったくやってこない領域が主虹と副虹の間で,この領域がアレクサンダー暗帯である.

 さらに丁寧に考察するならば,

  dθ/da=2(−3a^2−n^2+4)/√(n^2−a^2)√(1−a^22(√(n^2−a^2)+√(1−a^2))

より,n>2の場合にはdθ/da<0より包絡線が存在しないので,主虹は存在しないことも理解される.

 水(屈折率≒4/3)であっても,ガラス(屈折率≒3/2)であっても虹はできるのであるが,反射する球体の屈折率が2以上の場合,たとえばダイヤモンド(屈折率=2.42)の場合,虹のできる様子は水滴の場合とはかなり異なってくる.どのような透明体であっても差し支えないわけではなく,水の屈折率が1.3程度であったおかげで,われわれは美しい虹を見ることができるのである.

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